抹茶の菓子で最も相談が多いのが色です。焼いたら沈む、日が経つと褪せる、ロットによって濃さが違う。
この問題に対して、原料の側には3つの答え方があります。抹茶そのものを扱いやすくするか、色を持つ別の素材を足すか、色素で決めるか。どれを選ぶかで、風味も表示欄も変わります。

抹茶の色は「比較的」しか保証されない
まず前提を揃えておきます。
美濃与の抹茶ペーストは、加熱後の色を問うFAQに比較的残りますが、配合量や加熱条件によって変化しますと答えています。クロレラ抹茶も同じ問いに比較的残りますが、配合量や加熱条件により変化しますです。
2品とも「比較的」です。抹茶の緑は、原料を替えれば固定できるという性質のものではありません。色を要件にするなら、原料の選定と同じ重さで加熱条件を詰めることになります。
これは白味噌が加熱で色づくのと裏表の話です。白味噌の記事で扱ったとおり、加熱は素材の色を動かします。抹茶の場合は濃くなるのではなく、鮮やかさが落ちる方向に動きます。
3つの選択肢は、優先するものが違う
| 選択肢 | 何を優先しているか | 原材料表示 | 規格 |
|---|---|---|---|
| 抹茶ペースト | 風味と作業性。抹茶由来の色味と風味がしっかり感じられる | 抹茶の加工品 | 要問い合わせ |
| クロレラ抹茶 | 色調表現。深みのある緑色が加わる | 抹茶にクロレラを配合 | 100g・500g・1kg |
| 色素(挽茶色) | 色そのもの。粉末と練の2形態 | 着色料として表示 | 粉末/練 |
抹茶ペーストは分散性で選ぶ
抹茶ペーストは抹茶をベースに、なめらかな状態に調整した加工用ペースト原料で、粉末抹茶に比べて分散性が高く、生地やクリーム、ソースなどに均一になじみやすいとされています。粉末抹茶との違いを問うFAQでもペースト状のため分散性が高く、ダマになりにくい点が特長ですと答えています。
色ムラの原因が「色が落ちた」ではなく「混ざりきっていない」ことがあります。ダマになった部分だけ濃く、周りが薄い状態は、退色ではなく分散の問題です。粉末で仕込んでいてムラが出るなら、ここを疑ってください。
加熱後については加熱後も色調が比較的安定しやすい仕上がりとされています。用途はケーキ、ムース、クリーム、フィリング、アイス、ゼリー、プリンです。
クロレラ抹茶は色を作る原料
この銘柄は位置づけがはっきりしています。抹茶にクロレラ粉末を配合した緑色原料で、抹茶由来の香りとほろ苦さをベースにしつつ、クロレラ特有の深みのある緑色が加わり、色調表現に優れていますとされています。
抹茶の風味の強さを問うFAQには抹茶の風味は感じられますが、主に色調表現を重視した原料ですと答えています。商品ページ自身が「主に色のための原料」だと言っています。
用途には麺類や生地への練り込みも挙げられており、均一に色が入りやすく、断面の色調を安定させやすい原料とされています。断面の緑を商品の顔にしている菓子では、ここが効きます。
ただし表示は変わります。抹茶にクロレラを配合した原料なので、自社の原材料表示に出てくる項目が抹茶だけでは済みません。どう表記するかは規格書で確認してください。「抹茶の菓子」として売る商品で、表示に別の原材料が並ぶことをどう扱うかは、営業側とすり合わせておく必要があります。
原料の規格や製造工程をまとめた資料をご用意しています。選定の判断材料としてお使いください。
色素を使うと表示は「着色料」になる
3つ目の選択肢が色素です。美濃与では挽茶色の色素を粉末と練の2形態で扱っています。草青色の粉末色素もあります。
ここで押さえておきたいのが表示のルールです。消費者庁の資料は、食品添加物は物質名で表示するのが原則としたうえで、用途名の併記が必要なものを挙げています。その区分に着色料が入っています。
つまり色素を使うと、原材料表示は「着色料(◯◯)」の形になります。ただし例外があり、物質名や簡略名に「色」の文字が含まれる場合は用途名「着色料」を省略できます。どちらの形になるかは使う色素の物質名で決まるので、規格書の表示例でご確認ください。「膨張剤」のように一括名だけで済む区分とは扱いが違います。この違いは重曹とベーキングパウダーの記事で整理しています。
「抹茶」と名乗れるかどうかが変わる
色素で緑を作るということは、色の由来が抹茶ではなくなるということです。
抹茶を主役に打ち出している商品で、色だけ色素に頼ると、商品の見え方と表示欄が食い違います。抹茶の配合を減らして色素で補うという設計は、コストは下がりますが、商品の訴求と噛み合うかを先に確認してください。
逆に、色を安定させることが最優先の商品もあります。断面の緑がロットごとに違うと返品になる、という取引条件なら、色素で押さえるほうが合理的です。どちらが正しいかではなく、何を守る商品かで決まります。
粉末と練で使う場面が違う
挽茶色には粉末と練の2形態があります。粉体に混ぜるのか、水分のある生地やクリームに溶かすのかで、扱いやすい形が変わります。
色素の銘柄ごとの詳しい条件については、使いたい工程をお聞かせいただければご案内します。
色が合わないときに見る順番
原料を替える前に確認したい項目があります。
- 混ざりきっているか——ダマが残っていると濃淡が出ます。退色に見えて分散の問題であることがあります
- 加熱条件が本番と同じか——試作の型と本番の型では、表面積も加熱時間も違います。小さい型で合った色が、本番で合うとは限りません
- 配合量が変わっていないか——2品とも「配合量によって変化します」と明記されています。原価調整で抹茶を減らしていないか
- 保管条件——抹茶ペーストは冷蔵保管が基本で、開封後は早めに使用することとされています。クロレラ抹茶は直射日光や高温多湿を避け冷暗所で密閉保管です
この4つを潰してから、原料の変更を検討してください。原料を替えても、混ざっていなければ同じ結果になります。
選ぶときに見る項目
| 確認すること | なぜ見るか |
|---|---|
| 色と風味のどちらが主か | クロレラ抹茶は主に色調表現の原料。風味を主にするなら抹茶ペースト |
| 分散の状態 | ダマは退色に見える。ペーストは分散性が高くダマになりにくい |
| 本番の加熱条件 | 2品とも配合量と加熱条件で色が変わると明記されている |
| 原材料表示 | クロレラを配合した原料は表示欄が抹茶だけでは済まない |
| 着色料の扱い | 色素を使うと用途名を併記した表示になる。商品の訴求と合うか |
| 保管条件 | 抹茶ペーストは冷蔵、クロレラ抹茶は冷暗所で密閉 |
| 断面を見せるか | 練り込みで断面の色を安定させたいならクロレラ抹茶に記載がある |
よくある質問
焼くと抹茶の色が沈みます
抹茶ペーストもクロレラ抹茶も、加熱後の色は「比較的残るが、配合量や加熱条件によって変化する」とご案内しています。原料を替える前に、本番と同じ加熱条件で試作しているか、配合量が変わっていないかを確認してください。そのうえで色を優先するなら、色調表現を重視した原料に切り替える選択肢があります。
色ムラが出るのですが
退色ではなく分散の問題であることがあります。抹茶ペーストは粉末抹茶に比べて分散性が高く、ダマになりにくい点が特長とされています。粉末で仕込んでいて濃淡が出ているなら、ペーストへの切り替えで解決することがあります。
クロレラ抹茶は抹茶の味がしますか
感じられますが、商品ページは「主に色調表現を重視した原料」だとしています。抹茶の風味を主役にしたい商品では、抹茶ペーストのほうが噛み合います。色を安定させることが優先なら、クロレラ抹茶が候補になります。
色素を使うと表示はどうなりますか
着色料は用途名の併記が必要な区分です。ただし物質名や簡略名に「色」の文字が含まれる場合は、用途名「着色料」を省略できます。どちらになるかは使う色素の物質名で決まります。抹茶を主役に打ち出している商品で色素を使う場合は、表示欄と商品の訴求が食い違わないか、営業側と先にすり合わせてください。
断面の緑をロットごとに揃えたいのですが
クロレラ抹茶は練り込み用途について、均一に色が入りやすく断面の色調を安定させやすい原料だとご案内しています。作りたい商品と、いまの色の振れ幅をお聞かせいただければ、原料と配合の組み合わせからご相談できます。
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抹茶の色は、原料を替えれば固定できるものではありません。何を守りたいかで打ち手が変わります。風味なのか、断面の均一さなのか、ロット間の再現性なのか。優先順位を教えていただければ、原料の組み合わせからご提案します。
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