薯蕷饅頭のふくらみと肌は、山芋の粘りで決まります。
問題は、その粘りをどこから取るかです。粉だけで組むのか、生の芋を併用するのか。ここで工程も、仕込みの安定性も、原材料表示も変わります。

粉だけでも作れるが、併用する現場もある
まず商品ページの記載を確認します。分銅印の薯蕷粉は、生の山芋が必要かを問うFAQに薯蕷粉のみでも使用できますが、配合や用途により生芋と併用される場合もありますと答えています。
つまりどちらも成立するということです。どちらが正しいという話ではなく、何を優先するかで決まります。
| 組み方 | 粘りの出どころ | 仕込みの安定性 | 工程 |
|---|---|---|---|
| 薯蕷粉のみ | 粉 | 高い。粉なのでロット差が出にくい | 計量してそのまま |
| 薯蕷粉+生芋 | 粉と芋の両方 | 芋の状態に左右される | 皮むき・すりおろしが要る |
| 薯蕷粉+すり芋(冷凍) | 粉と芋の両方 | 冷凍品なので安定しやすい | 解凍して攪拌 |
3行目は、生芋を扱う工程を持たずに芋由来の粘りを足す組み方です。冷凍のすり芋を使います。
すり芋は仕込みの手間を減らす
美濃与のすり芋(要冷凍)は長芋や大和芋などの芋原料をすりおろし、風味と粘りを保ったまま急速冷凍した原料です。芋本来の粘りとコクがあり、解凍後もなめらかな質感が保たれますとされています。
生芋を使う現場が抱える手間は、皮むきとすりおろしです。芋は個体差が大きく、すりおろしの粗さも作業者によって変わります。冷凍のすり芋は、この工程ごと外せます。
商品ページも冷凍品のため品質が安定しやすく、必要量だけ解凍して使用できるため、仕込み作業の効率化にもつながりますとしています。
非加熱でも使える
用途の幅について記載があります。加熱せずに使用できるかを問うFAQに使用できます。とろろ用途など非加熱調理にも対応していますと答えています。
実際の微生物規格は規格書でご確認ください。薯蕷饅頭は蒸す菓子なので加熱しますが、非加熱でも使える品質で作られているということは、微生物管理の設計に余裕があるということです。生地を仕込んでから蒸すまでに時間が空く工程でも扱いやすくなります。
解凍したら戻せない
冷凍品の制約は共通です。解凍後の再冷凍について品質低下の恐れがあるため、解凍後の再冷凍は推奨していませんとされ、解凍方法は冷蔵解凍がおすすめです。完全解凍後、軽く攪拌してから使用してくださいと記載があります。
荷姿は1.5kg×10Pです。1袋を解凍したらその1.5kgを使い切る前提で仕込みを組んでください。攪拌の一手間も工程書に入れておかないと、ロットによって粘りの出方が変わります。
原料の規格や製造工程をまとめた資料をご用意しています。選定の判断材料としてお使いください。
やまいもはアレルゲンの推奨表示に入る
ここが品質保証の側で最も効く論点です。
消費者庁の「食品表示基準について」別添 アレルゲンを含む食品に関する表示によれば、やまいもは特定原材料に準ずるもの20品目に含まれています。同資料では、代替表記として「山芋」「ヤマイモ」「山いも」、拡大表記の例として「千切りやまいも」が挙げられています。
義務表示ではありませんが、含む旨を可能な限り表示するよう努めることとされています。中〜大手の取引では書くことを求められると考えておくほうが安全です。
粉が山芋由来かどうかを規格書で確認する
すり芋は芋そのものなので、やまいもに該当することは明らかです。問題は薯蕷粉のほうです。
美濃与の薯蕷粉は2銘柄あり、商品ページの説明が異なります。特選薯蕷粉は大和芋・つくね芋など国内産の上質な薯蕷芋を原料とした上用粉とされていますが、分銅印の薯蕷粉は原料欄が「穀粉加工類」で、本文に「山芋由来の粘り」とあるだけです。
薯蕷粉が山芋由来なのかどうかで、やまいもの推奨表示に該当するかが変わります。「粉だからアレルゲンは関係ない」と考えて表示を組むと、後で書き直しになります。採用前に規格書で原料を確認してください。
アレルゲン表示の考え方全般は和菓子原料の成分表の見方で、義務表示のアレルゲンを扱う場合の考え方はそば粉の記事で整理しています。
薯蕷粉は2銘柄で位置づけが違う
選定にあたって、商品ページの説明を並べておきます。
分銅印の薯蕷粉は上用菓子用に適した品質を重視して仕上げた薯蕷粉で、きめ細かな粉質で、山芋由来の粘りを均一に引き出しやすく、生地の伸びやまとまりが安定しますとされています。蒸し上げ後はきめ細かく、しっとりとなめらかな口当たりになり、色味は淡く、雑味が少ないため、餡や素材の風味を邪魔せず、上品な仕上がりを実現できますという説明です。
特選薯蕷粉は粒子が細かくなめらかで、上生菓子の外郎(ういろう)生地や薯蕷饅頭に欠かせない素材とされ、蒸すことで独特のふっくらとした食感と風味が生まれ、和菓子の品格を引き立てますと説明されています。用途には薯蕷饅頭、上生菓子、雑煮もち・蒸し物が挙げられています。
粉は吸湿する
保管の記載は、特選のページにだけ吸湿への注意が付記されています。特選薯蕷粉は直射日光・高温多湿を避け、冷暗所で保管してください。吸湿しやすいため開封後は密封容器に移して早めにご使用くださいとされています。分銅印の薯蕷粉は冷暗所での保管です。
どちらも22kgという荷姿です。吸湿すると同じ重量を計量しても実際の粉の量が減るので、生地の水分設計が狂います。薯蕷饅頭のように生地の状態が仕上がりに直結する菓子では、開封後の密封が効いてきます。
産地は個別に確認する
特選薯蕷粉は産地を問うFAQに国内産の上質な薯蕷芋を原料としています。産地・品種についてはお問い合わせくださいと答えています。
農産物なので年によって動く可能性があります。原料原産地を仕様に書く予定があるなら、発注前に確認してください。
組み方を決めるときに見る項目
| 確認すること | なぜ見るか |
|---|---|
| 生芋の工程を持てるか | 皮むきとすりおろしは個体差が出る。冷凍のすり芋で外せる |
| 薯蕷粉の原料 | 山芋由来かどうかで、やまいもの推奨表示に該当するかが変わる |
| 1回の解凍量 | すり芋は1.5kg×10P。再冷凍を推奨していない |
| 解凍後の攪拌 | 工程書に入れないとロットで粘りの出方が変わる |
| 粉の保管 | 吸湿すると生地の水分設計が狂う。22kgを開封後どう置くか |
| 産地の記載 | 仕様に書くなら発注前に確認する。年によって動くことがある |
| 仕上がりの狙い | 肌のきめか、ふくらみか。銘柄で説明の力点が違う |
よくある質問
薯蕷粉だけで薯蕷饅頭は作れますか
作れます。商品ページも、薯蕷粉のみでも使用できるが、配合や用途により生芋と併用される場合もある、としています。粉だけで組むほうが仕込みは安定しますが、芋由来の風味と粘りをどこまで求めるかで判断が分かれます。
生芋を扱う工程を持てません
冷凍のすり芋という選択肢があります。長芋や大和芋などをすりおろして急速冷凍したもので、必要量だけ解凍して使えます。皮むきとすりおろしの工程を持たずに、芋由来の粘りを足せます。
やまいもの表示は必要ですか
やまいもは特定原材料に準ずるもの20品目に入っており、含む旨を可能な限り表示するよう努めることとされています。すり芋を使う場合は該当します。薯蕷粉については原料が山芋由来かどうかで変わるので、規格書でご確認ください。
2つの薯蕷粉はどう使い分けますか
商品ページの説明では力点が違います。分銅印の薯蕷粉は生地の伸びやまとまりの安定と、しっとりなめらかな口当たりを挙げています。特選薯蕷粉は蒸したときのふっくらとした食感と風味を挙げています。狙う仕上がりをお聞かせいただければ、比較用のサンプルをご用意します。
粉が湿気を吸ってしまいます
22kgの荷姿を開封したまま置いていないかを確認してください。吸湿すると同じ重量でも実際の粉の量が減るため、生地の水分が合わなくなります。使うペースに対して荷姿が大きすぎる場合は、発注の頻度からご相談いただけます。
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業務用の調達・サンプル請求はお気軽にご相談ください
薯蕷饅頭は、粉と芋のどちらから粘りを取るかで工程が変わります。生芋の扱いに手が取られているなら、冷凍のすり芋で外せる部分があります。いまの仕込みの流れを教えていただければ、組み方からご相談いただけます。
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